2025年11月8日放送の【人生最高レストラン】でゲストの清水ミチコさんが紹介した、元祖和風パスタ・あさりスパゲティのお店は『壁の穴 渋谷本店』です。

スパゲティ専門店「壁の穴」は、和風スパゲティの元祖として、日本の食文化にすっかり根付いた老舗です。1953年（昭和28年）、東京都田村町（現在の新橋周辺）で成松孝安氏が「Hole in the Wall」という名の小さな専門店を開業しました。当時、日本ではスパゲティが一般的ではなく、「しつこいイタリアのうどん」と見なされており、創業から約20年間は苦労が続きました。しかし、創業者を励ますお客様の声に支えられ、お店は存続しました。

1964年（昭和39年）ごろに渋谷区宇田川町へ移転すると、たちまち評判となり、行列のできる人気店へと成長しました。清水ミチコさんのお父様が和風パスタの味に感動して、地元の飛騨高山でフランチャイズ店をオープンしたというエピソードが番組で紹介されました。

「壁の穴」の大きな特徴は、メニューの多くが、お客様とのコミュニケーションから生まれた「合作」であることです。創業者の成松氏は、麺が茹で上がる間にお客様と「このソースを使ったらおいしいのでは？」と熱心に話し合い、新しい味を次々に試していきました。その交流から生まれたメニューは、今では全国的に親しまれています。

たとえば、同店の代名詞とも言える「たらこスパゲティ」は、1967年（昭和42年）ごろ、常連の音楽家が持ち込んだキャビアの缶詰がきっかけで誕生しました。キャビアを使ったスパゲティが好評だったことから、より手軽な食材としてタラコを使用し、海苔茶漬けから発想を得て海苔をトッピングする工夫が施されました。このように、お客様との会話を大切にするおもてなしの心と、日本人好みの味を追求する探求心が「壁の穴」の歴史を築いてきました。

創業当初から人気の「若者のアイドル」は、鉄板で熱々に炒めたスパゲティに、厚切りベーコンやウインナー、きのこ類、ピーマンなどの具材をたっぷりのせ、バター醤油風味で仕上げたボリューム満点の一皿です。お客様の要望に応えてきた結果、現在では80種類以上の豊富なメニューが揃っています。

和風スパゲティの開拓者として、タラコ以外にも日本の食材を使った個性豊かなメニューが揃っています。創業者が子どもの頃に食べた深川丼の味を再現した「あさりスパゲティ」は、アサリとニンニク、ショウガを使った醤油ベースの味付けで、長年愛されてきた一品です。「うにスパゲティ」や「納豆スパゲティ」など、和の素材をパスタと組み合わせたメニューも常連客のリクエストから誕生しました。

さらに、「壁の穴風ナポリタン」は復刻を望む声が最も多かったメニューで、独自のレシピで改良され、伝統の味を受け継ぎながらも進化を続けています。

加藤浩次・宇賀神メグ・島崎和歌子・清水ミチコ