【ザワつく金曜日】松茸ご飯『樋山』埼玉県川口市のお店の場所

店主の熊木望さんは、高校卒業後に日本料理の道に進み、うなぎやふぐ、茶懐石まで様々な調理技術を習得した後に開業しました。東川口駅から徒歩5分というアクセスのよい場所にあり、総席数20席ほどの小さなお店です。

1990年代から熊木さんは松茸の生育環境が年々失われていく状況に心を痛め、全国の松茸生産者を訪ね歩くようになりました。
山の手入れを手伝いながら交流を深め、生産者との間に確かな信頼関係を築いていったのです。
その結果、松茸生産者と直接取引できるようになり、長野や岩手など全国の名産地から採れたての最高級松茸が店に集まるようになりました。

この店には国産松茸のわずか数パーセントしか流通しない最上級品が集まるといわれ、名だたる料亭や問屋にも松茸を卸すことから、松茸の世界では唯一無二の専門店として知られています。
一般的な市場や店頭に並ぶ松茸は収穫から時間が経ち、水分と香りが抜けてしまっていますが、この店で扱う松茸は採れたてのものばかり。松茸本来の香りと旨みを存分に堪能できるのが大きな特徴です。

松茸以外にも季節ごとに魅力的な料理が揃っています。
春には京都・白子の夕堀筍を使った料理が楽しめます。この筍は一年を通して手入れされた竹林の粘土質の土壌で育つため、アクがほとんどなく、生でも甘くジューシーな味わいです。刺身や直炊き、焙烙焼き、田楽、天ぷら、筍だけで炊き上げた筍御飯など、様々な調理法で筍の美味しさを引き出しています。
また、桜鯛や甘鯛、桜マスなど春の魚料理も充実しており、刺身やしゃぶしゃぶ、煮付、塩焼などで旬の味を堪能できます。

夏から秋にかけては、鱧料理が人気です。淡路島・沼島産の鱧を使った牡丹鱧、鱧刺し、鱧のしゃぶしゃぶ、鱧皮ざく、鱧寿司、鱧の子など、鱧のあらゆる部位を様々な調理法で味わえます。
特に鱧松鍋は、ざく切りの松茸や黄ニラ、九条ネギにもずくも加わった一品で、出汁の芳醇な味わいが印象的です。6月下旬からは早松茸が登場し、秋には本格的な松茸のシーズンを迎えます。

松茸のお浸し、松茸だけの茶碗蒸し、土瓶蒸し、松茸のフライ、紀州備長炭と珪藻土の飛騨コンロで職人が目の前で丁寧に焼き上げる焼き松茸、そして松茸御飯の松茸あんかけなど、松茸料理のフルコースが楽しめます。
焼き松茸は表面に浮き出た旨みエキスを最初に吸い、手で細く裂きながら食べると、炭火でじっくり焼かれたかさの部分に溜まった旨みスープが口いっぱいに広がります。松茸ご飯はお米とほぼ同量の松茸が入っており、その贅沢さには圧倒されます。

秋から冬にかけては、天然とらふぐや松葉蟹のコースも登場します。とらふぐの煮凝り、から揚げ、薄造り、ちり鍋、白子焼き、白子酒、雑炊など、ふぐのあらゆる魅力を堪能できます。
松葉蟹のコースでは、せこ蟹、内子、蟹味噌、甲羅酒、刺身、蒸し蟹、蟹だけの茶碗蒸し、炭火焼、蟹飯、雑炊と、蟹尽くしの料理が続きます。また、黒毛和牛のコースでは、冷やし牛しゃぶしゃぶ、シャトーブリアンの炭火焼、特製すき焼き丼など、極上の和牛を様々な調理法で味わえます。

石原良純・長嶋一茂・高嶋ちさ子・高橋茂雄