2025年12月16日放送の【マツコの知らない世界】で紹介した、干し納豆の発酵火鍋のお店は『貴州火鍋』です。

貴州火鍋は2019年3月にオープンした、日本では唯一といわれる貴州料理専門店で、新小岩駅南口から徒歩約5分のルミエール商店街を進んだ先にあります。オーナーと料理長は中国・貴州省北部の遵義市出身の姉妹で、唐辛子の産地として知られる地元の食材を使った本場の味を楽しめます。貴州省は中国南西部の高原地帯に位置し、険しい山々に囲まれた土地柄から独自の食文化が育まれてきました。塩や食材が手に入りにくい環境で培われた発酵技術と、さまざまな調理法で加工される唐辛子が、貴州料理の大きな特徴となっています。2021年8月には人気ドラマ「孤独のグルメ」で取り上げられ、大きな話題となりました。

このお店の最大の特徴は、5種類の自家製唐辛子調味料を使い分けていることです。唐辛子を発酵させて作る糟辣椒や、湯で戻してペースト状にした糍粑辣椒など、それぞれ異なる風味と辛さを持つ調味料が料理ごとに使い分けられています。四川料理の花椒を使った麻辣とは異なり、発酵による酸味と旨味を伴った独特の辛さが貴州料理の真骨頂です。中国には「貴州人は辛くないのを恐れる」という言葉があるほど、貴州の人々は辛い料理を好むそうで、特に遵義の唐辛子は辛さで知られています。また貴州の豆豉は日本の納豆とそっくりの製法と味わいを持ち、ドクダミの根などのハーブも料理に多用されるのが興味深いところです。

お店の看板料理である豆豉火鍋は、天日干しにした納豆と唐辛子調味料を炒めたものがスープのベースになっています。鍋が煮立ち始めたら干し納豆を最初に入れると、独特の発酵の香りが立ち上がり、納豆の旨味と唐辛子の風味が野菜や肉に深く染み込んでいきます。見た目も味も非常に濃厚ですが、塩分は控えめで、発酵による複雑な味わいが楽しめます。辛さは相当なものですが、つけダレを追加注文すると旨味がさらに増して、鍋の具材がいっそう美味しくなります。

その他の名物料理として、家常豆腐回鍋肉は貴州の家庭で作られる回鍋肉で、厚揚げと豚肉を唐辛子を刻んで漬けた糟辣椒で炒めた一品です。酸っぱ辛くてほんのり甘みがあり、ご飯との相性が抜群です。三椒鶏は赤唐辛子、青唐辛子、花椒の三種類で味付けした鶏料理で、強烈な辛さの中にも鶏肉の旨味がしっかりと感じられます。辣子鶏は四川の唐揚げとは異なり、糍粑辣椒でマグマのようにグツグツ煮込んだ煮物で、お酒がどんどん進む味わいです。さらに、こんにゃくを高菜漬けと貴州唐辛子で炒めた和え物は常連客に愛される一品で、怪噜饭という干し肉と干し納豆、ドクダミの根を使った炒飯は、貴州料理の特色ある食材がすべて揃った締めの逸品として人気があります。辛さは調整できますので、辛いものが苦手な方は「微辣」でオーダーするとよいでしょう。

マツコデラックス