瀬戸内の小さな食堂「関前食堂」
人口わずか250人ほどのこの島で、千葉県出身の加藤成崇さんと妻の千晴さんが手がけるこの店は、単なる食事処を超えた島の魅力発信基地として多くの人々に愛されています。加藤さんご夫婦は2017年に地域おこし協力隊として移住し、その後お店をオープンしました。
関前食堂が建つのは、大正時代に迎賓館として使われていた歴史ある建物です。
明治時代に隣の小大下島で石灰業が栄えていた頃、企業の要人をもてなすために建てられたこの建物を、加藤さんご夫婦が愛情を込めて手作りでリノベーションしました。床の張り替えから始まり、カウンターは板を削って自ら製作し、店内のガラスには千晴さんが東京時代に拾い集めた品物を使用するなど、細部にまで二人の思いが込められています。
港に面した窓からは穏やかな瀬戸内海を望むことができ、木のぬくもりと歴史の重みが織りなす居心地の良い空間が訪れる人々を迎えてくれます。
関前食堂の最大の魅力は、島の食材を活かした独創的なメニューの数々です。
看板メニューの合い盛りカレーは、島レモンのバターチキンカレーと島ひじきのキーマカレーを一皿で楽しめる贅沢な一品で、レモンの爽やかな酸味とスパイスの調和、そして海の恵みひじきの深い旨味が絶妙にマッチしています。
特に島レモンを使ったバターチキンカレーは、ピリッとした辛さの中にフルーティな酸味が効いた濃厚でコクのある味わいで、県外からもファンが足を運ぶほどの絶品として知られています。
土日・祝日限定で提供される島の魚の漬け丼御膳も見逃せません。その日に島で獲れた新鮮な魚を使用した特別メニューで、日によって魚の種類が変わるため、訪れるたびに新しい出会いがあります。
漬けタレがしっかりと染み込んだ魚を卵と絡めることで生まれるまろやかさ、そして魚の出汁がしっかりと出たあら汁まで、島の恵みを余すことなく味わえる贅沢な御膳です。
飲み物では、企業秘密のスパイス配合による島レモンのラッシーが人気。
従来のドロドロした甘いラッシーとは違い、爽やかで飲みやすい仕上がりで、スパイシーなカレーとの相性は抜群です。
デザートのレモン薫る自家製プリンは、加藤さんが何年もかけて完成させたこだわりの逸品で、固めの食感でありながらレモンの爽やかさでさっぱりと食べられ、カラメルのほろ苦さとのバランスが絶妙に調和しています。
関前食堂のもう一つの特徴は、地域に根ざした活動への取り組みです。島の高齢者と一緒に復活させた「しま味噌」の製造では、昔から岡村島の各家庭で行われていた味噌作りの伝統を、地域おこし協力隊時代に島のおばあちゃんたちと味噌製造業の資格を取得して商品化しました。
毎年160kgを製造していますが、すぐに完売してしまうほどの人気商品となっており、島の食文化継承にも大きく貢献しています。
今治港からフェリーで約1時間半、岡村港から歩いて3分という好立地にある関前食堂は、とびしま海道でサイクリングを楽しむ人々の拠点としても人気を集めています。
店名の「関前」は、岡村島・小大下島・大下島の3島からなる関前諸島の名前から取ったもので、知名度の低い関前諸島の良さをもっと多くの人に知ってもらいたいという思いが込められています。
加藤さんご夫婦は2022年に長男・世都くんを授かり、さらに賑やかな毎日を送りながら、移住者でありながらも島のコミュニティの中心として、地域の人々と共に島を盛り上げ続けています。
関前食堂は、島の時間と味を体現した場所として、訪れる人々に島暮らしの魅力と温かさを伝える特別な存在です。
- 合い盛りカレー
島レモンのバターチキンカレーと島ひじきのキーマカレーの両方を楽しめる
| 住所 | 愛媛県今治市関前岡村甲852-4 |
|---|---|
| 電話 | 090-7211-5571 |
菊池桃子・小木逸平
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この記事の作者・監修
Activi TV
こんにちは!食べることが大好きなグルメライター・料理愛好家のActivi TVです。料理の世界に魅了され、様々な料理の作り方や味を探求する日々を送っています。各地で出会った料理から、私は常に新しいインスピレーションを受けています。料理は文化であり、人々をつなぎ、温かい気持ちにさせる素晴らしい手段だと信じています。私の記事を通じて、読者の皆さんも新しい味と出会い、楽しい食体験をしていただければ幸いです。どうぞよろしくお願いします!
