【なりゆき街道旅】とろろそば『高橋家』高尾山のお店を紹介〔大林素子・山下健二郎〕

2025年11月16日放送の【なりゆき街道旅】ハナコと、大林素子さん・山下健二郎さんがゲストで紹介した、とろろそばのお店は高尾山『高橋家』です。

高橋家は、東京都八王子市の高尾山のふもと、京王線高尾山口駅からケーブルカー清滝駅に向かう参道沿いに佇む老舗の蕎麦処です。

天保年間に創業したこのお店は、江戸時代の末期から180年以上にわたり、高尾山を訪れる人々を迎え続けてきました。ケーブルカー清滝駅の正面という立地の良さもあり、登山の前後に立ち寄る人が絶えない名店として知られています。

創業当初は薬王院への参拝客が休息する茶屋のような存在だったといわれています。高尾山は1300年前から修験道の霊場として崇められてきた場所で、江戸時代にはすでに多くの参拝客が訪れていました。やがて旅籠として旅館業を営むようになり、遠方から来る参拝客が前夜に宿泊して翌朝早くに登山する、という利用のされ方をしていたそうです。

昭和初期には武蔵陵墓地が造られたことでこの一帯が大変賑わい、その時期に建物を増築して現在の外郭ができあがりました。その後、昭和42年に京王線が開通して高尾山口駅ができると、日帰りのハイキング客が増加したため、旅館から蕎麦を中心とした食事処へと業態を変えていきました。現在の店主は5代目にあたり、20年ほど前から夫婦でお店を切り盛りしています。

高橋家を訪れた人が必ず目にするのが、店内を貫いて屋根を突き抜けている樹齢150年余りの柿の木です。
もともと庭にあった木でしたが、昭和初期に増築する際、長年お店と共に歩んできたこの木を切るのは忍びないという想いから、屋根に穴を開けて残すという大胆な設計が採用されました。
薬王院のそばという場所柄、殺生禁断の意味合いもあったのかもしれません。
秋にはたくさんの柿の実がなり、霜が降りると自然な干し柿のような状態になって、かつてはメジロなどの野鳥がついばみに来ていたそうです。この柿の木にはしめ縄が飾られ、お店のシンボルとして大切にされています。

高橋家の看板メニューは、信州産のそば粉6割に大和芋と長芋を半々で合わせたとろろ、そして上質粉を練り合わせた独自の蕎麦です。細めで喉越しがよく、適度なコシと蕎麦本来の香りを楽しめるのが特徴です。
大和芋のねばりと長芋のとろみを組み合わせたとろろは濃厚な味わいで、高尾山の清らかな水でさらした蕎麦との相性は抜群です。とろろそばにはうずらの玉子と「とんぶり」がトッピングされ、つるりとした食感と優しい味わいが登山で疲れた体に染み渡ります。

柿の木にちなんだメニューも高橋家ならではの魅力です。天婦羅そばには干し柿の天ぷらが入っており、甘みと香ばしさが蕎麦の風味を引き立てます。

デザートメニューには、薄切りの干し柿柿日和や、まるごと柿を使ったシャーベット柿珠玉があり、食後の楽しみとして人気です。また、そばビールやそばの酒、柿の酒といった珍しいお酒も揃っており、蕎麦を楽しみながらゆっくりとくつろぐこともできます。

蕎麦以外のメニューも充実しています。鴨ねぎそばは、歯ごたえのある鴨肉としゃきしゃきのネギの相性がよく、鴨の脂が効いたやや甘めの汁が特徴です。麦とろめしは、麦ごはんの上にたっぷりのとろろ芋がかかった一品で、滋味深い味わいが体に優しく染み込みます。つまみとして焼き味噌、そば団子、湯葉こんにゃくの釜揚げなども用意されており、お酒と一緒に楽しむこともできます。

店内は古民家のような趣があり、椅子席、テーブル席、座敷席が用意されています。セルフサービスの蕎麦茶は何度でもおかわりができ、卓上の刻み海苔は食べ放題です。

高尾エリアのお店は平日休みが多かったり早めに閉店することが多いのですが、高橋家は原則無定休で夕方まで営業しているため、ハイキングの後にゆっくり立ち寄ることができます。週末や紅葉シーズンには行列ができることもありますが、回転が早いので比較的スムーズに入店できます。

ハナコ